独断と偏見によるお薦めシナリオゲーム


















沙耶の唄

沙耶の唄


ニトロプラス


虚淵 玄


 某友人曰く「大人の童話」。

 作品に通底する基本スタンスは、手塚治虫の名著「火の鳥」からのマルパクリなのだが、そこに成人指定だからこそ出来るグロテスクとエロティシズムを盛り込むことによって、単なるパクリ作品と言わせないだけの説得力を持つに至っている。

「火の鳥」にて描写されたマイルドな悲劇が、今作ではより鮮烈さと過激さを増しており、異様な説得力と描写力によって、ユーザーを凄まじい勢いで物語に引き込んでいく。

 コンプリートに費やす時間は五時間とかからない短い作品だが、珠玉の掌編を読んだ後のような心地よい満足感が得られる物語はそう多くない。
 
 端から見れば完全なグロ系作品だが、内容的にはれっきとした純愛作品にカテゴライズされる作品であり、美少女ゲームの中でも珍しい程にピュアな作品だ。

 値段も手頃で廉価版も発売されているので、未プレイの方には是非とも手に取って数時間のドラマに秘められた悲恋を堪能して頂きたい。
















螺旋回廊 復刻版 (1-2パック)

螺旋回廊


ruf


鬼畜人タムー


 プレイをするだけで、もれなく世界中のカップルに呪いあれ聖なるクリスマスが立派なトラウマになる鬼畜系の作品の傑作。

 簡単に内容を表現するならば、「エロゲーで出来る酷い事を全部詰め込んで濃縮しました」
みたいな作風となっており、「このシナリオライター、破防法的に豚箱にぶち込んだ方がいいんじゃね?」と割と本気で思えるモノに仕立て上がっている。

 (なお、ライターはあの「君が望む永遠」や「マブラヴ」を手がけている)

  外道を地で行く構成が為されており、プレイしているだけでもれなく人間不信になること間違い無しの、吐き気を催す展開のオンパレードとなっている。

 グロだとかスカトロだとか、そんなちゃちなもんじゃ断じてねぇ。もっとおぞましいモノの片鱗を味わえる物語であり、18禁ジャンル以外では出しようがない作品として大成しているのは、ある意味見事だと言わざるを得ない。

 純愛・萌えゲーばかりにしか興味の無いユーザーに悪戯でプレゼントすると、そのまま友情崩壊に繋がるのは必至な作品である。ご利用は極めて慎重に、かつ計画的に。
 
















Sense Off

sense off 〜a sacred story in the wind〜


otherwise


元長 柾木/シュート彦


 美少女ゲームの中でも例を見ない詩的情緒に満ちあふれた作品。

 発売日が近かった事、演出手法が巧みであった事、作曲者に折戸伸治とI’veが関わっていたこともあり、発売後に「理系AIR」という屈辱的な渾名を付けられる憂き目を見たが、そのプロパティは「AIR」とはまったく異なる。

 日常会話や共通ルートは凡庸かそれ以下の描写なのだが、個別ルートに入った後の展開は、本当に同一人物がシナリオを書いているのかと、目を疑いたくなる怒濤の流れとなり、一気呵成に読み進めさせてしまうだけの文の力が発露されている。

 また、今作のEDテーマ「birthday eve」はシナリオライターの元長氏自身が作詞を担当しており、この作品の構成要素の一つにもなっている完璧なゲームソングとして成立している。
 何より、歌詞の質が突き抜けており、明らかに美少女ゲームソングの中でクオリティが抜きん出ている。
「拡散する可能性を 収束させて掴み取る」の一小節などは、どこの詩人の弾き流しかと思う程だ。

 本作は100点満点を付けた数少ないタイトルであり、類似した作品が存在しないあらゆる意味で希有な名作だ。シナリオを楽しむ人間には、是非ともプレイしてもらいたい。
 
















奏 〜Kanade〜

奏−カナデ−


Purple software


田中 一郎


 エロゲーでは珍しいくらい短く綺麗な純愛物語。

 ……なのだが、開発時に内部で如何なる問題が生じたのか、昨今のゲームを構成する上で欠かせない幾つもの要素が残念な結果となってしまっている。

 特に致命的なまでにマズイのが、キャラクターの立ち絵にまったく変化がないところだろう。
「 差分? 何それ美味しいの?」とばかりに全てのキャラクターの表情・仕草が画一化されており、ものの見事にバリエーションというものが存在しない。

 また、作品内のクオリティ云々以前に、本作は初期出荷本数が相当少なかったのか、市場に殆ど出回っていないという前提問題がある。おかげで、このソフトが面白いと友人らに勧めても「どこにも売ってない」と返される惨状を呈した。

 こ れ は 酷 い 。

 しかし、キャラクター達の魅力は歴代の美少女ゲームの中でもトップクラスの作品であり、特に主人公が主人公にしか果たせない役割を、メインヒロインはメインヒロインにしか果たせない役割をきっちりとこなした点は大変素晴らしい。

 シナリオの展開順序に問題がないわけでもないが、必要な布石はきっちりと打っており、一件無関係そうな会話が作中の流れに深い意味を与えていたりと、見る人がみれば「あっ」と気付くギミックが仕掛けられているのも大きなポイントだ。
 
















フェイト/ステイナイト[レアルタ・ヌア] (通常版)

Fate/stay night


TYPE-MOON


奈須きのこ


 美少女ゲーム史上屈指の燃えゲー。

 物語の根底を成す論理が俗に言う厨二病に侵されているわけだが、大概のバトル漫画やラノベはこの手の論理で構築されてナンボなので、特に深刻な問題は無い。
 そもそも、今作はヒーロー・ヒロインが「物理って何ですか?」とばかりに縦横無尽に跳梁跋扈するのが前提な作品なんだから、細けぇことはいいんだよ!

 とにもかくにも登場人物達が一癖も二癖もある者達で占められており、それが独自のテンポを持つシナリオに合わさることで、異様なまでにキャラクターの個性を引き立てることに成功している。
 ヒロイン達がエロシーンであひんあひん喘いでいる時間より、流血したり・させたりしている時間の方が圧倒的に長いというエロゲーにあるまじき作品であり、事実エロシーンが無いコンシューマー版の方が面白かったりする。 (・3・)あるぇー?

  そんなわけで、まだ未プレイの方は杉山記彰や神奈延年、そして何より、あの中田譲治が声をあてているPS2版をオススメしておきたい。

 まったくどうでもいい話だが、私が今作で一番好きなヒロインは、三人いるメインヒロインの一人であり、三人の中で一番スタイルも良く、セイバーよりも物語の核心っぽいポジションにある、公式の人気投票で見事6位を獲得した「間桐 桜」である。
 















ひぐらしのなく頃に祭 お持ち帰りぃ~セット(限定版)

ひぐらしのなく頃に


07th Expansion


竜騎士07

 
  如何なる構成要素を犠牲にしても、物語の主軸たるシナリオが優れていれば後は副次的な要素似すぎない。
 喩え、登場キャラクターの拳が肉のグローブと化していても……。

 登場キャラクターの造型の優劣は数在れど、まさか拳がドラえもんと大差無いビジュアルノベルが出るとは……と、大層ビックリしたものだが、更にビックリしたのはその落書き同然の絵でもまったく苦にならない、優れた構築のなされた物語にこそある。

 時間の経過を忘れ、寝食を削ってモニタの前に釘付けになったゲームは本当に久しぶりであり、ここまで骨太の物語が同人作品として輩出された事には一種の感動すら覚えたものだ。
 読み手を飽きさせない優れた文、緻密に挿入された音楽、効果的で抜群の演出と、良きゲームに備わるべき要因が全て出揃っており、その構成練度は頗る高い。

 が、幾ら話が良くても、初見の訴求力が絶望的では流石に商売上マズイと判断されたのか、コンシューマーに移植された際にきちんとしたイラストレーターを起用したことで、あの異様な存在感のある絵はお役ご免となっている。
 















R.U.R.U.R ル・ル・ル・ル このこのために、せめてきれいな星空を 初回版

R.U.R.U.R 〜ル・ル・ル・ル〜 このこのために、せめてきれいな星空を


light


伊藤 ヒロ/中島 聖


 スペース御伽話。

 原作ファンにポア(宗教用語)されそうだが、「星の王子さま」を美少女ゲームにすると多分こんな感じになる。
  というよりも、制作者があの名著を意識しながら作ったことは、内容もさることながら、宇宙船の名前が「サンテグジュペリ号」であることから、暗喩的にモチーフにしたと宣言しているわけだが……。

 さて、「沙耶の唄」が大人の童話ならば、本作は大人の寓話である。
 とにかく作中のイベント一つ一つが非笑い的な意味で大変面白く、マルセル・デュシャンの「泉」やジョン・ケージの「4分33秒」、そして何より「星の王子さま」と同じく概念の遊びに関する話題が大変豊富に盛り込まれており、世界観を利用した秀逸な作り込みがなされている。

 キャラクター達の掛け合いも軽妙であり、特に「セーバーハーゲン」達の「ウィ、ムシュー」の遣り取りはプレイユーザーの記憶に焼き付けられるだろう。

 とあるヒロインがヤンデレ気質だが、基本的には実に「いいはなし」で構成されている。また、音楽が樋口秀樹氏が手がけているだけあって凄まじい臨場感が発揮されており、シナリオだけではなく演出効果も秀でた作品となっている。
















雫(しずく)DVD-ROM版




Leaf


高橋 龍也


 新たな試みに漫然は無いように、未踏の領域に踏み込むにはそれ相応の強い動機が必要となる。

 今作は、私がアダルトゲームに手を染める切っ掛けとなったゲームだ。

 開始からたった一分以内に描写される、日常の中に抑圧された明瞭で凄烈な狂気は、圧倒的なまでの質感をもってプレイヤーを物語の中に引きずり込む。

 文節一つ一つには血肉の滾りすら感じられ、モニタから染み出した狂った空気はプレイするものの背筋に汗を浮かばせる。

 X指定だからこそ可能な表現を駆使したテキストと、折戸伸治が編み出す仄暗い深淵を彷彿とさせる音楽がもたらす焦燥と恐怖は、ビジュアルノベルという新たな試みを確たる地位に据えさせた。

 本作は美少女ゲームの古典である。だからこそ、物語の奥深さを求める方には是非ともプレイしてもらいたい。なお、左のパッケージはリニューアル版。
















CARNIVAL

CARNIVAL


S.M.L


瀬戸口 廉也/たにみちNON/寿衣谷/桑島 由一


 可愛い赤ずきんちゃんだと思ったら血塗れのバレッタだったでござる、な作品。

 オープニングムービーはほんわか萌えゲーを連想させるのに、始まった瞬間から主人公が警察に連行されているという、ユーザー願望裏切りまくりの作品。汚い、流石エロゲー汚い。

 しかしながら、ユーザーを思いっきり釣る覚悟が為されているだけあって、肝心のゲーム内容は息を呑む展開が連続して続き、片時もテキストからユーザーを離れさせない。

 主人公とメインヒロインの心理描写に特化した作品であり、エロゲーでは珍しいほどの文学的叙述が為されており、その巧みな描写には舌を巻く。

 テキストによる描写は徹底的に緻密であり、ライターの技量だけで作品の魅力がすべて支えられているといっても過言ではない。

 作中の警察があまりにも役立たずだったり、小説版を合わせることで物語が完全に終焉を迎えるといった点はネックだが、それら欠点を考慮してもプレイに値する。
















Ever17 -the out of infinity-  [恋愛ゲームセレクション]

Ever17 -the out of infinity-


KID


打越 鋼太郎/中澤 工/笹成 稀多郎/梅田 伸明


 。いわゆるゴッド。

 美少女ゲームはもとより、私的名作ゲーム史の中でもトップを独走し続ける、傑作中の傑作SFゲーム。
 AVGの特性を完全に理解した作品であり、俗に名作と呼ばれる作品とは次元が違う作り込みが為されている。

 今後、この作品を越える作品は一生出てこないと断言しても強ち間違いではない。それほどまでに、「Ever17」は桁違いのクオリティを有している。

 しかし、SFゲームの金字塔たる作品である反面、物語を演繹するシナリオが中学生の読書感想文レベルの酷さで、ユーザーが活字中毒であればあるほど本作は放り出したくなるだろう。
 現に、私の場合は10回弱程、途中放棄し、そのたびごとに友人から激励を受けて再起動することを繰り返していた。 だが、物語終盤にさしかかった頃には時間の経過は完全に意識から締め出され、エンディングを迎えた頃には魂が抜け出る衝撃によって叩き伏せられていた。

 もし、あなたがAVGが好きであり、ゲームという存在そのものを愛しているのならば、この作品だけは絶対にプレイしてから死ぬべきだ。むしろ、これをクリアするまでは死ぬ事は許されないと言っても良い。
















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